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次に、「クラウドを活かせていない」「母艦としてMacかPCが必要(単体で使えない)」「16GB/32GB/64GBというラインアップがナンセンス」という点。これらは、実は同じことを別々の側面からいっています。

だいたい、これだけの革新性がある製品を、買ってきてそのまま単体で使えないとはどういうことか。こればかりは本当に理解しがたいことです。iTunesの価値をさらに高める戦略、またデータのバックアップ問題を解決する一つの方法であることは認めます。しかし、MacやPCとの「シンク」を前提としたために、犠牲になった使い勝手のマイナス要素はとても大きいと感じます。

今回、買ってきて意気揚々と起動してみると、アクティベーションを行わなければ何もできないのでiTunesにつなげと言われ、Macを起動してつないでみると今度はiTunesが古いから駄目だと言われ、アップデートをかけたら150MBもダウンロードする必要があるといわれ、外出先の回線では20分ぐらいかかりそうだったので諦めて帰宅し、そしてiTunesをアップデートして、いざ繋ぎ直してみると、今度はiPadを認識しない。iTunesを何度か再起動しても、iPadを起動しなおしても、もう一台別のMacで同じことをやっても駄目でした。結局、母艦のMacのほうを再起動してやっと認識させることができたのですが、21世紀にもなってデバイスを認識しないことでこんなに悩むなんて思いもよりませんでした。

そしてiTunesにつながったらつながったで、色々データを「シンク」するかどうか聞かれるのですが、iPadというのは初めて使う製品で、それをどう使うのがいいのか知りもしないのに、そんなことを最初に聞くほうがおかしい。シンクしたほうが楽しめるという提案であれば勝手にシンクしてくれりゃいいし、シンクしないほうがいわゆる「ブランク・スレート」から始められて学習曲線がニュートラルなのであれば、シンクしなきゃいい。そんなことで、ユーザが新製品を使い始めるまでの時間をのばし、「今の選択をあとで後悔することになったらどうしよう」と迷うようなポイントを置くのは、率直にいってデザインの失敗だと感じます。個人的には、何もシンクしないのをデフォルトにするのが正解だと思っています。そして、シンクしない人にとってみれば、上のiTunesがらみの手順やトラブルは、すべて「しなくていいはずの苦労」だったのです。

なぜシンクしないほうがいいのか。64GBクラスのデータをiPod classicやApple TVなどにシンクしたことがある人ならわかるとおもうのですが、とにかくめちゃくちゃ時間がかかるのです。それこそ、寝る前にシンクを開始して起きてもまだ終わってないぐらいの勢いです。iPhoneもApple TVもiPadも、結局、マスターのデータは大抵がMacやPC上にあるわけで、データをローカルに持つことの意味は「キャッシュ」としての意味しかありません。64GBもの容量があっても、実際にアクセスされるのはそのうちほんのごく一部で、そのごく一部のデータのために毎回すべてシンクするのを待たされるという時間コストを払うのは、総合的にみて割に合わないのです。これには情報工学の用語で「参照の局所性」という名前までついています。

だからぼくは、経験的に、iPhone/Apple TVなどではデータをほとんどシンクしなくなりました。一度はシンクに成功しても、何らかのミスや事故でシンクがぜんぶ失われ、また最初からやりなおしになったりすることがあります。そういうことが起きるたび、だんだんバカバカしくなってきて、もうシンクしないほうが楽じゃん、と開き直ったのです。そういうわけで、Apple TVは160GBほど容量があるけれど全然使っておらず、いつも母艦のiMacからストリーミングで動画や音楽を流しています。その結果、それだったらMac miniのほうがブラウザで動画サイトも自由に見られるしいいじゃん、ということで、その後、リビングではほぼMac miniがメインになってしまいました。iPhoneでは写真にFlickrのアプリを使っているし、音楽もPandoraなどの配信サービスを使うようになって、200GBもあるiTunesのライブラリから16GBに収まる分だけを選ぶなんて、そんな面倒なことはもうやってられません。

それでも懲りず、今朝になって写真を半年分だけでもシンクしてみるかと思い立ち、1500枚ほどシンク開始したのだけれど、すぐに外出する用ができたので500枚ぐらい転送が終わったところで仕方なくキャンセルして持ち出したところ、なんと!どういうわけか、昨日にインストールしたアプリが見事にぜんぶ消されていて、写真も一枚も転送されていなかったのです。これには相当腹がたったし、こういうことはシンクという操作にありがちなトラブルなので(バグなのか操作ミスなのか、いずれにしてもちょっとした想定外の挙動が大事故につながる)、トラウマになっていて、自然と避けるようになっていた矢先にこの事件です。

iPadは今回、16GBモデルが一瞬で売り切れて、32GBや64GBのモデルは売れ残ったようですが、そんなことはぼくにいわせれば当たり前なのです。iPadはMacやPC抜きにスタンドアローンで使うことさえできないのに、64GBものストレージの使い道がないし、そんな大容量を扱うことはむしろ「重荷」に感じられるのです。ストレージの容量で細かく傾斜をつけた価格体系は、iPodの時代ならいざ知らず、ネットに常時接続されたデバイスの製品ラインナップとしては奇妙で破綻しているように感じられるのです。

本来なら、あらゆるデータはネットの向こう側に保存して、バックアップとか何もかも全部自動で面倒みてくれていて、好きなときにいつでもどこからでもアクセスできるというのが究極のモバイルの未来像でしょう。

そういう発想を得意とする会社をすぐに思いつきませんか?そう、グーグルです。グーグルの仕掛けるAndroidが今後iPhoneの脅威になっていくという状況には、ある種の必然性すら感じます。グーグルにはユーザ体験の細部にとことんこだわるデザイナーの文化が希薄なためか、Androidはアップルの製品群に対してまだ2-3年分の遅れをとっているように感じられますが、アップルがハードウェアを売るコンシューマエレクトロニクス企業の発想を脱してクラウドの世界へ入っていけない限り、10年とかそういうスパンでみると、イノベーションが成熟した頃に、アップルのいいところだけは全部コピーされ、弱点だけが残ってしまい、またしても最終的にはおいしいところを他社に持っていかれてしまうのではないか、という危惧を持ちます。

iPad初体験レビュー:江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance - CNET Japan (via hoxide) (via konishiroku)